HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、博士学位の取得を目指して研究に励む、医薬保健学総合研究科医学専攻3年(取材当時)の和泉 マリナさんに、博士課程の魅力や研究のやりがいについてお聞きしました。
博士課程に進学された、きっかけを教えてください。
ロシアの大学に在学中に経験した、金沢大学との交流が博士課程(4年制)進学のきっかけです。私は父が日本人で母がロシア人です。日本で生まれ、高校卒業まで日本で過ごし、その後、ロシアのサンクトペテルブルク国立医科大学に進学しました。その間、大学間交流協定校である金沢大学との間でシンポジウムや研究室見学が行われ、私は日本語とロシア語のとして参加しました。大学間の交流では、金沢大学の脳神経外科を訪問する機会がありました。もともと「脳の研究がしたい」という思いが原点にあったので、金沢大学の研究室への訪問により、研究者になりたいという思いが一層大きくなりました。ロシアの医師免許を取得した、学部6年生のころに、現在の指導教員である医薬保健研究域医学系の中田光俊先生とミーティングを重ね、最終的に金沢大学の博士課程への進学を決意しました。
HaKaSe+ではどのような支援が受けられますか?
異分野の研究に触れる機会を得られたことが、私にとって非常に大きな支援だったと感じています。特に、ナノ精密医学?理工学卓越大学院プログラムで開講している金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)のナノ計測技術に関する授業や、分野を超えたラボローテーションは、自分の研究の視野を広げる大きなきっかけになりました。所属する研究室では扱っていなかった実験手法や分析方法を知り、新しい挑戦を行ったことが、現在の共同研究にもつながっています。

どのような研究をされているのですか?
? 私は現在、「悪性膠芽腫(あくせいこうがしゅ)」という脳のがんの一種について研究しています。この病気は非常に進行が早く、周囲の脳組織に広がりやすいため、治療が難しく、予後も厳しいとされています。私の研究では、病気の早期発見につながる「バイオマーカー」と呼ばれる目印を見つけることを目指しています。具体的には、患者さんの脳から採取された細胞や診療データを用いて、悪性膠芽腫に特有の分子や細胞の性質を詳しく調べています。これまで有効なバイオマーカーが見つかっていないため、小さな発見を積み重ねながら、将来的な診断や治療に役立つ手がかりを探しています。治療法が限られている対象だからこそ、研究の意義を強く感じています。
研究の息抜きはどのようにされていますか?
? 子どもの頃から続けているバイオリンを今も楽しんでいます。博士課程に進学してからは、研究室のメンバーに勧められて、医療関係者で構成され、病院や医学関係の学会などで演奏を行う「メディカルオーケストラ金沢(Mオケ)」に参加するようになりました。ベートーヴェンの第九や協奏曲の伴奏など、医療関係者と共に演奏する機会に恵まれ、研究とは異なる脳の使い方ができる貴重なリフレッシュの時間になっています。また、金沢は温泉も豊富で、特に金沢大学宝町キャンパス近くの「石引温泉」は、源泉かけ流しで気軽に入れるお気に入りの場所です。音楽と温泉、どちらも私にとって大切な息抜きです。

最後に将来の夢を聞かせてください。
? 私の将来の夢は、臨床と研究の両方に携わる医師になることです。医師は国家試験に合格するだけでなく、常に新しい知識を学び続けなければ、時代遅れの知識しか持たない存在になってしまいます。医学は日々進歩しており、新しい治療法も次々と開発されています。だからこそ、の知識を学び、実際の診療に活かすことが本当の意味での「医師」だと私は考えています。ロシアではすでに医師免許は取得しており、現在は日本で研究を始めています。今後は日本でも医師国家試験に合格し、研修医として臨床経験を積みながら、研究も継続していきたいと思っています。グローバルな時代だからこそ、国内外を問わず活躍できる医師を目指して努力を続けていきたいです。
※所属?学年?年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。
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(サイエンスライター?見寺 祐子)